私が初めて引越しの単身パックに類したものを利用したのは、「A」という、比較的知られたブランドのものです。
これは、その名前の会社が存在するわけでなく、中小の業者が集まって共通のブランド名を利用したり宣伝したりするような、一種の協会のようなシステムです。

 

結婚式場などでも類似のシステムは存在するようです。
軽トラック1台に、作業員兼運転手が1名。

 

大きなものの積み下ろしはこちら側の人間と共同で行い、半日で全てを終了させるという、最安コースのパックでした。
この場合、作業が始まるまでに全ての梱包が終わっており、後は積み込むだけという状態となっているのが前提です。
段ボール箱も、そのために事前に届けられるのです。

 

お恥ずかしい話ですが、私はそのとき、梱包作業を事前に終えることができませんでした。
それも、かなり残っていたのです。
怒られないまでも、相当に嫌な顔はされるだろうなと冷や汗ものでした。

 

ですが、運転手さんは、嫌な顔どころか、ニコニコ顔のまま「いや、よくあることですよ」と仰り、手早く梱包を手伝ってくれたのです。
もしアルバイトだったら余計な仕事が増えただけで舌打ちのひとつもしたくなったでしょうが、この方は自営運送店主だったのかも知れません。

 

お間違いなきよう願いたいのですが、私はあくまでAという業者のアットホームな雰囲気をお伝えするためにこのエピソードをお伝えしたのであって、ルールを破ったのはあくまで私です。

 

同じ業者が同じ応対をしてくれるとは限りませんし、あくまでビジネスの付き合いとして甘えることのないようにしていくべきです。
これは自戒でもあるのですが。

 

その後、一人暮らしとはいっても家族世帯なみの荷物を抱えるような状態となり、こうした低廉なパックを利用することはなくなりました。
もっとも、現代では2トントラックを使ったり、作業員二人を派遣したり、さまざまなニーズに応じられるよう、大小とりどりの一人暮らし用パックが用意されています。


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